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茨木のり子さんと長田弘さん

昨日、このブログを訪問して下さったaoakakiさんのブログに伺ったら詩のことを話されていました。

茨木のり子さん、長田弘さんの詩も素敵ですよ、とコメントしましたら、茨木さんの「自分の感受性くらい」「汲む」をご覧になって素敵、と言って下さったので(この2つは私も大好きな詩です。)もう少しご紹介しますね。

「聴く力」

ひとのこころの湖水
その深浅に
立ちどまり耳澄ます
ということがない

風の音に驚いたり
鳥の声に惚けたり
ひとり耳そばだてる
そんなしぐさからも遠ざかるばかり

小鳥の会話がわかったせいで
古い樹木の難儀を救い
きれいな娘の病気まで直した民話
「聴耳頭巾」を持っていた うからやから

その末裔(すえ)は我がことのみに無我夢中
舌ばかりほの赤くくるくると空転し
どう言いくるめようか
どう圧倒してやろうか

だが
どうして言葉たり得よう
他のものを じっと
受けとめる力がなければ

「みずうみ」

<だいたいお母さんてものはさ
しいん
としたとこがなくちゃいけないんだ>

名台詞を聴くものかな!

ふりかえると
お下げとお河童と
二つのランドセルがゆれてゆく
落葉の道

お母さんだけとはかぎらない
人間は誰でも心の底に
しいんと静かな湖を持つべきなのだ

田沢湖のように深く青い湖を
かくし持っているひとは
話すとわかる 二言 三言で

それこそ しいんと落ち着いて
容易に増えも減りもしない自分の湖
さらさらと他人の降りてはゆけない魔の湖

教養や学歴とはなんの関係もないらしい
人間の魅力とは
たぶんその湖のあたりから発する霧だ

早くもそのことに気づいたらしい
小さな
二人の
娘たち


2006年に茨木さんが亡くなられた後に編まれた『茨木のり子の家』(平凡社)の半ば過ぎのページには創刊当時茨木さんが発行責任者をされていた同人誌「櫂」の連詩の集まり(1975年)の写真が載っていて、吉野弘、茨木のり子、岸田衿子、大岡信、川崎洋、谷川俊太郎などそうそうたる面々が1枚の写真に収まっています。

岸田衿子さん、と言えば、茨木さんの『詩のこころを読む』で知ったこの方の詩を以来折々に口ずさみます。

「くるあさごとに」

くるあさごとに
くるくるしごと
くるまはぐるま
くるわばくるえ
長田弘さんの詩も少し。

「空の下」

黙る。そして静けさを集める。
こころの籠を静けさで一杯にする。
そうやって時間をきれいにする。
独りでいることができなくてはできない。
静けさのなかには、ひとの
語ることのできない意味がある。
言葉をもたないものたちの語る言葉がある。
独りでいることができなくてはいけない。
草の実が語る。樫の木の幹が語る。
曲がってゆく小道が語る。
真昼の影が語る。ジョウビタキが語る。
独りでいることができなくてはいけない。
時間の速度をゆっくりにするのだ。
考えるとは、ゆっくりした時間を
いま、ここにつくりだすということだ。
独りでいることができなくてはできない。
空の青さが語る。懐かしい死者たちが語る。
何物もけっして無くなってしまわない。
独りでいることができなくてはいけない。
この世はうつくしいと言えないかもしれない。
幼いときは、しかしわからなかった。
この世には、独りでいることができて、
はじめてできることがある。ひとは
祈ることができるのだ。

「言葉のダシのとりかた」 

かつおぶしじゃない。
まず言葉をえらぶ。
太くてよく乾いた言葉をえらぶ。
はじめに言葉の表面の
カビをたわしでさっぱりと落とす。
血合いの黒い部分から、
言葉を正しく削ってゆく。
言葉が透きとおってくるまで削る。
つぎに意味をえらぶ。
厚みのある意味をえらぶ。
鍋に水を入れて強火にかけて、
意味をゆっくりと沈める。
意味を浮き上がらせないようにして
沸騰寸前サッと掬いとる。
それから削った言葉を入れる。
言葉が鍋の中で踊りだし、
言葉のアクがぶくぶく浮いてきたら
掬ってすくって捨てる。
鍋が言葉もろともワッと沸きあがってきたら
火を止めて、あとは
黙って言葉を漉しとるのだ。
言葉の澄んだ奥行きだけがのこるだろう。
それが言葉の一番ダシだ。
言葉の本当の味だ。
だが、まちがえてはいけない。
他人の言葉はダシにはつかえない。
いつでも自分の言葉をつかわねばならない。




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コメント

こんにちは。

素敵な詩をご紹介いただいて、ありがとうございます。
どの詩も素敵ですが、特に「聴く力」。

私は話し上手ではないので、聞き上手でありたいと思っているのですが、
人の話を聞くまたは聴くということは、本当に難しいと感じます。

興味のある話なら良いのですが、そうでない話もきちんと聞く、
受け入れると言うことは難しい。
しかも、そういう必要に迫られることが年とともに多くなってる気がします。
でも、難しくて(^_^;)

この詩が身にしみます。


by: aoakaki * 2012/08/29 11:29 * URL [ 編集] | page top↑
aoakakiさん、ようこそ♪
「聴く力」気に入っていただけて嬉しいです。
コメントを読んで、「他のものを じっと 受けとめる力」について、またしばし考えてしまいました。
投げかけられた言葉の持つ重みを感受する力でもあるであろう、その力を内に秘めて、静かに穏やかにいることによって、磨かれ、研ぎ澄まされていく、そのありように憧れます。
by: m. * 2012/08/31 10:54 * URL [ 編集] | page top↑

どの詩も心に響きました・・・。

私の気持ちを代弁してくれるような詩たち。
(「みずうみ」はなんとなく覚えがありましたが、ほかの詩は初めて。今度またもっと読んでみたいです。)

“我がことのみに無我夢中
舌ばかりほの赤くくるくると空転し”
“しいんとしたとこがな”い人達に、嫌な思いさせられたことが多々あります・・・
そして、大抵そういう人達は“独りでいることができない”から群れますよね・・・。

どの詩にもとても惹かれますが、特に最後の“いつでも自分の言葉をつかわねばならない”というところが沁みます。
これが、簡単な用で、実はとても難しいのです・・・。
by: TK * 2012/08/31 22:31 * URL [ 編集] | page top↑
嬉しいです!
群れないことは、ぽつねんと独りいることではないのです。人からも、自然からも、本からも、音楽からも、映画からも、多くの声を聴き、心の奥底の「みずうみ」を感受したもので満たしていることによって満ち足りているから。

常には群れない人と人とが出会って「自分のことば」で語りあう刻を夢みます。ゆるりとしたときの中で…。
by: m. * 2012/09/01 00:07 * URL [ 編集] | page top↑

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