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さて、と ぼちぼちはじめます。

一昨日、目白で花房葉子さんの展覧会とブックトークがあり、参加してきました。
http://mugimugidou.com/mugimugidou_official_homepage/information.html
ブックトークはスペイン料理文化アカデミー主宰の渡辺万里さんとの対談ですすめられました。

今、ヨーロッパでは「食と五感」という観点からの食文化の見直し、分析のしなおしがされつつある、という渡辺さんのお話を興味深く伺いました。記憶に繋がる味覚、臭覚(香り)、感性を呼び起こす視覚、触覚(ふわふわ、つるつる、とろっ、さくさく、カリカリ)、聴覚(ポリポリ、カリカリ)。花房葉子さんの著書『野のごちそう帳』は、五感で味わう内容を色濃く備えた本である、ということに繋げてのお話でした。
いずれも日本人には周知の「五感で味わう」感じ、が改めて、今、というあたりから、「食」に限らず、「生きて今あること」を味わうすべについての感受性のありかの彼と我との違い、などにも思いを馳せました。

「みつばちのささやき」や「エル・スール」などのスペイン映画の映像美に繋げて話された「海を飛ぶ夢」(未見)、ジョルジュ・サンドが我々の先入観を裏切ってショパンに献身的な愛情を注いだキャリアウーマンのはしりであったことが知れる『マョルカの冬』(藤原書店)、食に関して堀田善衛の思い違いの記載が楽しい『スペイン430日 オリーブの樹の蔭に』(筑摩書房他)等々、見聞き知りたく思いました。

「五感で味わう」に触発されて、最近読んだ何冊かの代田亜香子翻訳の作品に共通する空気について考えました。
代田さんは2001年出版『屋根にのぼって』(オードリー・コルンビス 白水社)の翻訳を皮切りに、『屋根にのぼって』『家なき鳥』『オリーブの海』(いずれも白水社)などのシリアスなものと「プリンセス・ダイアリー」シリーズ(河出書房新社)などのキャピキャピ女子高生が主人公のものの翻訳を出版されています。先月、金原瑞人さんとの対談を伺う機会があり、まだ、途上ではあるのですが、彼女の翻訳した本を読み進みつつあります。その対談の中で代田さんもおっしゃていたことですが、その翻訳作品(シリアスなものの方)は、深刻な問題をかかえた主人公、過酷な状況下におかれた家族の物語が多いにもかかわらず、決して暗くはない、暗いだけでは終わらない、のです。

『きらきら』(シンシア・カドハタ 白水社 2004年)は、日系三世の作者による日系アメリカ人の姉妹とその家族の物語。才気煥発で美しい姉リンが、姉を慕い愛してやまない主人公の目を通して魅力的に描かれた作品。原書のタイトルも“Kira-Kira”。「きらきら」はリンが最初に主人公ケイティに教えてくれた言葉。(以下、斜体文は引用)

 リンは何度もくり返しいった。「ケイティ、いってごらん。『きらきら、きらきら』」わたしはそのことばが大好きだった。大きくなると、好きなものはなんでも「きらきら」と呼んだ。きれいな青い空、子犬、子猫、ちょうちょ、色つきのクリネックス。(P5より引用)

働きづめの両親、貧しい暮らし、姉の病によかれと引っ越した町での差別に身をさらされる生活、そんな不遇をかこつ日々の中での「きらきら」を「きらきら」と感じ取る心の持ちようは、より一層「きらきら」と輝いて見えます。

『ハーメルンの笛吹きを追え!』(ビル・リチャードソン 白水社 2004年)は、101歳のおばあさんペネロピーによって語られる90年前の冒険譚と現在が交錯する物語。その中の一節。

たしかに説教はしないことにしている。でももう百一歳なんだし、たまにはその約束をやぶってもいいだろう。そこでひとつ忠告がある。一日に一度は立ちどまって、その瞬間を味わってごらん。まわりを見まわす。色やにおいや音に注意をはらう。そしてそのすべてを、自分のなかに取りこむ。その瞬間がすぎてしまったら、次の瞬間がどんなものになるのかだれにもわからないんだから。(P38-39より引用)

『オリーブの海』(ケヴィン・ヘンクス 白水社 2005年)は、事故で亡くなったクラスメイト、オリーブ・バーストウの日記の1ページをオリーブの母親から渡されたマーサの物語。日記に記されたことがらのひとつひとつがマーサをゆさぶる。
「本が書きたい」-私も…。
「本物の海に行ってみたい」-これから世界で一番好きな太平洋に面したおばあちゃんの家に行くところ
「マーサ・ボイルと仲良くなりたい。友だちになれたらいいなと思う」-「クラスじゅうでいちばんやさしい」なんて書かれることをしたっけ?
こんな思いをたずさえておばあちゃんの家で過ごす一夏。オリーブに、と持ち帰った「海」は、オリーブのお母さんに渡されることなく終るのですが、おばあちゃんの隣の家の少年との苦い恋、そして秘かにマーサを見守っていた少年の弟の存在に気付き、彼に救われたこと、そのすべてが今や心に中に住みはじめたオリーブと分かちがたくあります。

そして、それまで、何かぎくしゃくとしたものをかかえていた、父、母を彷彿とさせる我が家との折り合いをこんなふうにつけて物語は終息します。

呼吸をととのえてから、マーサは玄関のドアをあけ、見なれた明るい廊下に足をふみいれた。ここは何もかもが安全だ。マーサは心にきざみつけた。家の音、家のにおい、それぞれの部屋のようすやふんいき。遠くまで行ってたわけでも、長いあいだでかけてたわけでもないのに、マーサはどうしてもいいたくてたまらなかった。自分自身のために。そして、大きい声でいった。「ただいま」(P173より引用)

どの作品も立ち止まり、深呼吸して、今、ここにあることを五感で味わうことによって実感できる充足感を謳っています。代田さん翻訳の作品に限らず、深い味わいのある児童文学やYAの作品に、欠かせないエッセンスとして含まれている要素でもあるように思います。
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